このページでは、当クリニックで診療する耳鼻科領域の症状を中心に説明しています。ある症状からどのような病気が考えられるかを解説し、必要に応じた早期の診察・検査の必要性を述べています。
耳
1.耳が痛い
耳の中が痛くなるのは、何らかの炎症が起こっている可能性があります。
お子さんに多いのが急性中耳炎で、せきや鼻水などの風邪症状を伴っていることも多いです。痛みは間欠的(痛い時間帯と痛みが治まる時間帯を繰り返す)であることも特徴です。
耳を触ったり引っ張ったりすると痛みが強くなる場合は、急性外耳炎の可能性があります。耳かきをよくしている人に起こりやすく、ひどくなると耳の中だけでなく外まで腫れることもあります。
その他、食事の時に物を噛む際に耳の少し前の方が痛む場合は、顎関節症・炎症が考えられます。当クリニックでは鎮痛薬などのお薬は出せますが、顎関節の根本的治療は歯科・口腔外科が専門ですので、そちらにご紹介いたします。
また耳自体に問題がなくとも、扁桃炎などの炎症で耳が痛くなることがあります。これは放散痛(ほうさんつう)と言って、のどの強い炎症の痛みが、すぐ近くの耳奥に響いて感じる痛みと考えてもらうと分かりやすいと思います。
2.耳の聞こえが悪い
耳の聴こえが悪くなるのには、色々な原因が考えられます。大きく分けて、@音が耳の奥の神経まで十分伝わらない、A音は耳の神経まで伝わるのに神経がそれを十分に感知できない、といった2つのパターンが考えられます。
@の例としては、耳垢がたまった場合や、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎で鼓膜の奥に水が溜まった場合、急性・慢性中耳炎真珠腫性中耳炎で鼓膜に穴があいたり耳だれが溜まったりするなどの炎症の場合で、音が耳の奥まで伝わる経路に何らかの問題がある場合です。この場合は薬や手術で適切な治療がなされれば、聴力は回復することが期待できます。
Aの例としては、突然聴こえの神経が障害を受ける突発性難聴や、大きな音を聴いた直後から聴こえが悪くなる音響外傷、耳の奥の器官からリンパ液が漏れて生じる外リンパ漏などあります。これらは突然聴こえが悪くなるのが特徴で、早期に治療を開始すれば聴こえが戻る可能性も高くなりますが、治療開始が遅れると戻る可能性も低くなります。もちろん、人によっては早期から治療しても十分戻らないケースもありますが、いずれにせよ早期に検査・診察を受け、悔いを残さないよう治療計画を立てるのが良いと思います。
また、Aの例であっても年齢変化で聴こえの神経が徐々に衰えてゆく老人性難聴や、うるさい職場・環境などで長年過ごしているうちに徐々に神経が障害される騒音性難聴もあります。これらは徐々に進行する難聴であり、高音部が聞き取りにくいとか、音は聴こえても人の会話が聴き取れない(言葉がはっきり分からない)などの症状が特徴です。この場合残念ながら薬などの治療は効果が薄いですので、今後の生活指導などのご相談や状況によって補聴器の利用などを相談することになります。
この他、慢性的に経過する難聴の中でも、めまいや耳鳴りも伴った発作として繰り返すものにメニエル病があります。低音部の難聴が典型的で、聴こえが悪いというよりは耳が詰まったように強く感じることがあります。メニエル病に類似しますが、めまい症状を合併せずに低音部の難聴のみを繰り返して起こす低音障害型感音難聴というものもあり、若い女性に比較的多い特徴があります。
3.耳鳴り
耳鳴りは耳鼻科の中では非常に厄介な症状の一つであり、根本的かつ確実な治療法がいまだ無いのが現状です。本人の自覚症状でしか分からないため、余計に診断・治療を難しくしています。ただし耳鳴りには重要な病気が隠れている可能性がありますので注意が必要です。
最も多いのは老人性難聴などの加齢に伴うものですが、若い人でも突然の耳鳴りで調べてみたら、難聴になっていたというケースもあります。突発性難聴メニエル病などでも起こる耳鳴りですが、聴神経腫瘍という聴こえの神経にできる良性腫瘍でもしつこい耳鳴りをきたすことがあります。耳鳴り以外にもめまいや体のバランス感覚がおかしいなど、他の症状を合併して気になるようでしたら、診察を受けた方がよいでしょう。
4.めまい
「めまい」と一口に言っても、その原因・細かな症状は様々で、きちんと分けて考えることが大事です。めまいの場合にまず大事なのは、そのめまいが命に関わる重大なものか、そうではないかを的確に区別することです。例えばめまい症状に加えて、激しい頭痛を伴う場合は脳出血の可能性がありますし、手足の麻痺や言語障害(ろれつが回らない)などの症状を伴う場合は脳梗塞も疑われますので、これらの際には緊急の処置が必要になります(実際には救急車で救急病院へ搬送ということになるかと思います)。めまいやおう吐以外に特に症状が無く、緊急対応が必要なめまいではないと考えられれば、めまいの原因検査や治療に進むことになります。
めまいの原因を、@耳からくるめまい、A耳以外からのめまい、の2つに分けて考えると分かりやすいと思います。耳の奥には前庭(ぜんてい)という体のバランスを保っている平衡器官が存在し、そこの異常・障害でめまいが生じます。@の場合、体を動かした時に回転するような〜揺れるようなめまい発作として感じることが多く、前庭性めまいとも言います。多くは一過性で症状は治まりますが、メニエル病の場合は耳の症状(難聴や耳鳴り)を伴って発作が繰り返します。外リンパ漏もめまいと難聴を繰り返すため、十分な経過観察を行い初期の診断が重要です。また前庭の中でも三半規管という体の動きを感知する器官の障害で、良性発作性頭位めまい症というものもあります。この場合のめまいは特徴的で、頭を動かした時に数秒〜数分以内のごく短い回転性めまい発作を繰り返すというものです。また、事故などで強く頭をぶつけた後に同様の症状があらわれることがあり、内耳振盪(ないじしんとう)と言われ、衝撃による三半規管などの一時的障害と考えられます。更に、前庭器官の直接障害ではなくとも、前庭器官に接続する神経(前庭神経)の急性炎症で起こる前庭神経炎や、神経にできる聴神経腫瘍でもめまいを生じます。
Aの耳以外の場合、脳の血流障害によるめまいが代表的なものになります。頭の中でも特に小脳や脳幹といったところは体全体のバランス・運動を保つためのセンターのような所なので、血流障害や出血・腫瘍などでそこが障害されると、めまい症状をきたします。前述の脳梗塞・脳出血は最も重いものですが、例えば糖尿病や高コレステロール血症など動脈硬化が基礎にある人は脳血流障害をきたしやすく、めまい症状も起こりやすくなります。この場合のめまいは体が宙に浮いているような感覚のこともあり(浮動性めまいと言います)、症状がずっと長く続くなどの特徴があります。また若い人にも比較的多いのが起立性調節障害で、長時間立っていたり急に立ち上がったりした時に、血圧の調節がうまくいかずに血の気が引いたようにクラクラと座り込んでしまうような症状が出ます。厳密にはめまいとは言えないかもしれませんが、俗にいう脳貧血や自律神経失調症がこれにあたります。これら以外にも、甲状腺疾患などの内科的病気や、更年期障害でもめまい様の症状をきたすことがあり、幅広い診察が必要になることもあります。
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鼻
1.鼻水
鼻水は大きく分けると、水のような透明なサラサラした鼻水と、色のついた粘っこいドロドロした鼻水があります。水のような鼻水の代表例はアレルギー性鼻炎花粉症を含む)で、くしゃみを伴うことが多いです。粘っこい鼻水は細菌感染などによる炎症と考えられ、急性副鼻腔炎慢性副鼻腔炎などが疑われます。
鼻づまり
鼻づまりで口呼吸になると非常に不快な症状ですが、その原因をきちんと確認する必要があります。花粉症でも鼻づまりは起こりますが、特にダニやハウスダストなどを原因とするアレルギー性鼻炎に長くかかっている人は、慢性的に鼻づまり症状をきたします。また、急性副鼻腔炎で鼻内の粘膜が腫れた際や、慢性副鼻腔炎で鼻茸(はなたけ;ポリープ)が出来て通りを塞いでいる場合は鼻づまりをきたします。これら炎症とは別に、鼻中隔(びちゅうかく)という鼻を左右に分ける真ん中の仕切りが曲がっている場合にも、鼻中隔わん曲症といって鼻の中が物理的に狭くなって鼻づまりを起こします。鼻内にできた腫瘍が大きくなって通りを塞ぎ、鼻づまりをきたすこともあります。
鼻粘膜
[写真]左:正常の右鼻内の様子。
中央:アレルギー性鼻炎の右鼻内で、画面中央に白っぽく水ぶくれ状に見えるのが、腫れて通りを塞いだ鼻粘膜。
右:鼻中隔わん曲症の右鼻内で、矢印のところで鼻中隔が右鼻内にとび出しており、鼻内が狭くなっている。
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口・のど
1.口内の痛み、のどの痛み
口内の痛みの場合、口内炎・舌炎で粘膜や舌の荒れが起きている可能性があります。こう原病の1種であるシェーグレン症候群では、だ液の分泌減少により口内が乾くとともに口内の痛みが出ることがあります。また、ヘルペスなどのウイルス感染や、カンジダなどのカビの増殖によっても口内〜のどの粘膜に病変が出現して痛むことがあります。
のどの痛みの原因としては、カゼなどに伴う単純な咽頭炎(いんとうえん)や喉頭炎(こうとうえん)から、扁桃炎扁桃周囲炎・膿瘍などの症状の重いものまであり得ます。更に、痛みのみならず唾が飲み込めない、息苦しいなどの症状を合併する場合には、急性喉頭蓋炎などが考えられ、この場合は窒息の危険があるため緊急に耳鼻科で適切な診断・処置が必要となります。また、口内やのどに腫瘍ができて痛みが起こることもあり得るので、長引く症状には注意が必要です。
2.味覚障害
味がおかしい、わからないといった症状の原因として、血液中の微量金属成分の低下の可能性があります。特に亜鉛欠乏は味覚障害を起こすことが知られており、気になる方は一度採血での検査をお勧めします。また鉄欠乏ではよく知られる鉄欠乏性貧血の他に、舌が荒れて味覚障害をきたすこともあり、気になる方は貧血とあわせて調べてもよいでしょう。状況に応じて不足成分の補充療法を行います。
3.のどの違和感・異物感
のどの違和感・異物感を訴える方は結構いらっしゃいますが、検査などを行っても大きな異常はないケースも多いです。しかしそういう方でも、のどの粘膜に軽い炎症がおこっている場合もあり、特に逆流性食道炎や喉頭アレルギーなどはその代表例です。また、稀に咽頭や喉頭に腫瘍ができてこうした症状が出現することもあるので、耳鼻科でのしっかりした診察を受けた方がよいでしょう。
4.声がれ
声がガラガラになったり、息が漏れるようにかすれたりする時には、声帯の異常を疑います。声をよく使う人にできる声帯結節声帯ポリープ、喫煙者にできやすくガラガラ声になるポリープ様声帯などがあります。また、高齢の方では声帯が委縮してきて、発声時に息が漏れるような声がれになることがあります。喫煙者に特にリスクが高いものとして、喉頭がんによる声がれも注意しなければなりません。
以上のような声帯自体の異常の他に、声帯の動きが麻痺して起こる声帯麻痺でも声がれが起こります。特に水を飲む時にむせる場合は、疑いが強くなります。この原因としては、脳梗塞などによる神経麻痺などが挙げられますが、声帯を動かす神経(反回神経)が原因不明で麻痺することもあります。特に注意するべき点は、この反回神経が通る胸部に原因があるケースも存在することです。具体的には、胸部腫瘍や大動脈瘤で声帯麻痺をきたすことがあり、声帯の麻痺がある場合には必ず胸の検査をした方がよいでしょう。
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首、その他
1.首の腫れ・できもの
首に腫れもの・しこりができた場合は、その場所と腫れ方である程度の区別がつきます。耳の前方〜下方に痛みの無いしこりがある場合は、多くは良性ですが耳下腺の腫瘍が疑われます。同じ部位が全体的に急に腫れて痛みを伴う場合は、急性耳下腺炎が考えられますが、細菌感染が原因の可能性のものと、ムンプス(いわゆる「おたふくかぜ))などのウイルス感染によるものなどがあります。
顎の下が腫れる場合、食事の時に痛みを伴って腫れを繰り返す場合は顎下腺唾石症などが原因の顎下腺炎と考えられます。痛みが無く腫れが徐々に大きくなる場合は腫瘍などにも注意する必要があります。
首の真ん中下方(男性ではのど仏の下方)が腫れる場合、甲状腺の病気も疑われます。慢性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎などの炎症性疾患の他に、甲状腺機能が亢進するバセドウ病、良性・悪性の甲状腺腫瘍などもあります。採血で甲状腺機能を確認するとともに、腫れの状態によってはエコーやCTなどの精密検査が必要になることがありますので、しかるべき医療機関にご紹介することがあります。
これらとは別に、首にはリンパ節という組織が多く存在します。普通の人でもある組織ですが通常は目立ちませんが、カゼなど炎症を起こすと痛みを伴って腫れることがあり、急性リンパ節炎の状態になります。耳の後ろや下の方に多く認めます。逆にリンパ節が痛みも無く徐々に大きく硬くなってくる場合は、腫瘍の転移などの可能性がありますので要注意です。
2.いびき・睡眠中の無呼吸発作
いびきは睡眠中に息の通り道が狭くなって起こる症状ですが、ひどい場合には呼吸が一時的に止まってしまう発作を繰り返すことがあります。その頻度がひどい場合を睡眠時無呼吸症候群といい、目安としては睡眠1時間当たりの無呼吸の回数が10回以上であれば立派な睡眠時無呼吸症候群と言え、治療を考慮すべきと言われています。お子さんでは扁桃腺やアデノイドが大きいことが原因となることが多く、成人では元々のどの形が狭い場合に加え、肥満が原因になることもあります。この状態を放置することは合併症などのリスクを高めるため、きちんと診断・治療を受けることが望ましいでしょう。
3.顔の麻痺
顔の筋肉は顔面神経という神経の働きで動きますが、この神経が何らかの原因で麻痺してしまうと顔面神経麻痺という状態になり、片側の顔面が動かなくなって目が閉じられなくなったり、口に含んだ水が口元から漏れてしまったりします。ヘルペスなどのウイルス感染で起こると言われますが、脳梗塞に伴う場合や、神経の通り道に腫瘍ができて生じるケースもあり、きちんとした検査が必要です。
4.皮膚の湿疹・荒れ
特にアレルギー性鼻炎やぜんそくをお持ちのお子さんには、皮膚のトラブルを抱えている方が少なくありません。こうしたお子さんはそうでないお子さんに比べて、アトピー性皮膚炎の合併のリスクが高くなります。耳たぶの下が切れる、顔面〜首に湿疹用のものができて常に掻いている、肘の内側や膝の裏側などに湿疹状のものができて痒がるなどの症状が見られたら要注意です。
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