このページでは、当クリニックで診療する代表的な疾患について分かりやすく簡潔に説明しています。患者様が自分の病気のことを理解することで今後の診療がスムーズに行えるよう、その助けとなればと思います。
耳
1.急性中耳炎
お子様に多い病気ですが、大人でもかかることがあります。多くはカゼ症状が先行し、耳の痛みに加え、耳の詰まり感や聴こえにくさも生じることがあります。診察すると鼓膜が赤く腫れており、炎症が強くなると鼓膜が破れて中から貯まった膿が耳だれとして流れてきます。
治療は細菌を殺す抗生物質の内服や耳に垂らす点耳薬を使いますが、耳垂れが出ずに痛みが強い場合には、鼓膜を切開して貯まった膿をわざと外に出す場合があります。痛みに対しては鎮痛薬を対症的に用いますが、通常であれば数回服用すると痛みは取れてきます。ただし不完全に治ると、次に述べる滲出性(しんしゅつせい)中耳炎という、鼓膜の奥に水が貯まるタイプの中耳炎に移行することもあります。
2.滲出性中耳炎
これも小学校低学年までのお子様に多い病気です。鼓膜の奥に組織から染み出した水が貯まるタイプの中耳炎で、慢性の経過をとります。鼓膜の奥(中耳というスペース)の気圧と外気圧の差をうまく調節できずに、耳が詰まった感じになったり、聴こえが悪くなったりします。鼓膜の奥(中耳)と鼻の奥とは、耳管と呼ばれる細い管でつながっており、その管の働きが悪くなると高い山に登ったりトンネルに入ったりした時のような耳の詰まり感が持続します。ですので、鼻炎で鼻が詰まったり鼻の奥にあるアデノイドが大きかったりするお子さんは、耳管機能が悪くなって滲出性中耳炎になるリスクが高まります。耳管機能が衰える高齢者の方にも比較的見られますし、鼻の奥にできる上咽頭腫瘍によって耳管機能が妨げられると認める場合もあるので注意が必要です。
治療は、軽度であれば耳管機能を改善させる薬を使用しますが、治りにくいものには鼓膜切開をして貯まった水を吸い出します。鼓膜切開を何度か行っても再発を繰り返す場合には、鼓膜を切開したところに小さなチューブを挿入して、わざと鼓膜に小さな穴を開けた状態にしておきます。こうすることで鼓膜の内外の気圧を調節し、再び水が染み出してくるのを予防します。
3.慢性中耳炎
急性中耳炎を繰り返すなどして適切な治療がなされないと、鼓膜に穴が開いたまま残って、細菌感染による耳だれを繰り返すようになり、炎症が慢性化してしまいます。鼓膜の奥に炎症性組織が増殖し、聞こえは徐々に低下してきます。あまり進行しないうちに手術を受けることで、耳だれを止めたり聴力を改善させたりすることが可能なケースもあります。
4.真珠腫性中耳炎
 慢性中耳炎のような経過をとりますが、真珠腫と呼ばれる耳あかの一種が鼓膜の奥で周囲の骨を溶かしながら大きくなっていくという、特殊なタイプの中耳炎です。進行すると耳奥でバランスをとる器官の前庭に障害を与えてめまいを起こすことがあり(耳掃除をした時にめまいがするなど)、更にひどくなると脳の方へ影響して髄膜炎などを起こすことがあります。普段は耳鼻科での定期的な耳掃除が必要になりますが、根治的にはタイミングを見計らって手術を考慮することも必要になります。
5.突発性難聴
ある日突然、片方の耳が聞こえなくなる病気です。程度は個人差があり、はっきりとした原因は不明で、そのため確実に治るという確立した治療法が無いのが現状です。めまいを伴うことがあります。経験的に広く行われている治療は、ステロイド薬の使用(内服または点滴)ですが、他に循環改善剤などの点滴なども行われます。発症から早期(2週間以内が一つの目安)に治療した方が改善する可能性が高いと言われますが、早期から治療しても治らなかったり、ほとんど無治療でも自然治癒する例もあったりと、ケースバイケースなところもあって一概には言えません。ですが、やはり無治療よりは早期の治療開始で改善率が上がることは経験的に受け入れられているため、後で悔いを残さないように早期の診察・治療計画をお勧めいたします。
なお、ステロイドは副作用が心配な薬でもあり、血糖値を上げて胃炎・胃潰瘍を悪化させます。ですので、糖尿病や胃潰瘍などの合併疾患がある人は入院して十分な管理下でステロイドを使用するか、ステロイド以外の循環改善剤などの使用を検討することになります。
6.音響外傷
大きな音を聞いた直後から聴こえが悪くなる難聴です。爆発音を耳のそばで聞いたり、コンサートで大音量にさらされたりした後に生じることがあります。高音を中心に聴力が落ち、程度が強ければ突発性難聴同様にステロイド治療を早期に開始します。
7.外リンパ漏
耳の奥、中耳よりさらに奥は内耳と言い、リンパ液で満たされています。重いものを持ったりトイレでいきんだりした時に、圧がかかって内耳からリンパ液が漏れ出した状態が外リンパ漏です。リンパが漏れた時に弾けるような音がした、水が流れるような耳鳴りがする、難聴が変動したりめまい症状が出現したりと症状が変化する、などのエピソードがある場合にはこの病気が疑われます。しかし他の突発性難聴やメニエル病などとも起こり方が類似し、この病気を確実に診断することは難しいのが現状です。症状が軽ければ入院してベッド上で頭を少し上げた体位で安静にすることで治ることもありますが、改善しなければ診断と治療を兼ねて手術をするケースもあります。手術ではリンパが漏れている場所を塞ぐ処置をします。
8.老人性難聴
年齢変化で聴こえの神経が衰え、徐々に聴力が低下する状態です。特に高音部での低下が著しく、人の会話が分かりにくい(言葉がはっきりせずに話の内容が理解できない)、早口やボソボソ話されると特に分からないなどといった特徴があります。耳鳴りを合併することも多く、万人に効くわけではありませんがビタミン剤・循環改善剤・ある種の漢方薬などが効果を示すケースがあります。ただし、残念ながら聴力に関しては薬や手術では改善は期待できませんので、難聴の状態に応じて補聴器をお勧めすることになります。当クリニックにおける補聴器の導入は、治療案内のページの「補聴器外来について」をご覧ください。
9.騒音性難聴
職場などの騒音環境で長い間過ごしていると、高音部(特に2000Hzを中心とした周波数)の難聴が進行してきます。初期の場合は難聴を自覚することがほとんど無く、定期的な聴力検査で早期発見することが重要になります。このタイプの難聴も、一旦落ちてしまった聴力を戻すのは困難ですので、今後の難聴進行の予防と、生活の不自由度に応じた補聴器使用を検討することになります。具体的な進行予防策としては、職場の配置転換や耳栓の使用などがあります。特に騒音性難聴がある人に年齢変化が加わると、平均的な人よりも早く老人性難聴が進行して会話が不自由になりますので注意が必要です。
10.メニエル病
めまい、耳鳴り、難聴の3つの症状がほぼ同時に発作的に生じて、良くなったり悪くなったりを繰り返して慢性に経過する病気です。特に難聴は低音部が低下するタイプで、耳が詰まったように強く感じることがあります。疲れや精神的ストレスが主な悪化原因と言われ、生活習慣や環境を整えることも重要です。通常は片方の耳で始まりますが、後から反対側の耳でも症状が出現して、両側とも罹患するケースも少なからずあります。
治療としては、ある種の利尿薬や漢方薬などをメインに用い、他にもめまい止めなども適宜用います。長い経過をとる病気ですので、症状に応じて薬の量を調節したり休薬したりと、きめ細やかな対応が大事になってきます。
11.低音障害型感音難聴
メニエル病に似た原因・経過をとりメニエル病の類似疾患ととらえられますが、めまい症状は無く、低音部の難聴のみを繰り返して起こす病気です。若い女性に比較的多く、やはりストレスや疲労が悪化因子になるようです。治療はメニエル病で使用する薬を用いることが多く、一過性で改善してメニエル病ほど長く繰り返すことは少ないですが、後からめまい症状も合併してメニエル病に移行するケースもあります。
12.聴神経腫瘍
聴神経と言いますが、厳密には聴神経と一緒に走行する平衡神経も合せて、その神経の束に発生した腫瘍です。初期には耳鳴りのみの症状のこともあり、良性腫瘍で進行は遅いので症状に気付きにくいことも多いです。進行すると、突発性難聴様の聴力低下をきたしたり、めまいやバランス障害をきたしたりすることもあります。聴力検査やめまいの検査を行い、疑わしい場合は頭部MRIを撮影するのが望ましいです。
良性腫瘍ではありますが、発生場所が頭の中なので、状況に応じて手術で摘出することが根本的な治療になります。しかし大きくなるスピードが非常にゆっくりなので、年齢を考慮して経過観察にとどめたり、ガンマナイフという放射線治療を行うことで対処したりする場合もあります。
13.前庭性めまい
耳の奥にある前庭(ぜんてい)という体のバランスを保っている平衡器官の障害で生じるめまいです。体を動かした時に回転するような〜揺れるようなめまい発作として感じることが多く、多くは一過性で数日中に症状が治まることが多いです。基本的には対症療法となり、安静にしてめまい止めや吐き気止めの薬を使います。
14.良性発作性頭位めまい症
前庭の中でも三半規管という体の動きを感知する器官の障害で起こるめまいです。三半規管の中には耳石という小さな砂粒があり、これが動くことによって体の動きをとらえています。この耳石が本来ある場所からずれてしまい、頭を動かす際に余計な刺激を与えられることになり、めまいが生じます。上を向く・下を向く・寝返りを打つ・仰向けから起き上がる・座った状態から仰向けになるなど、頭を動かすことで数秒〜数分以内のごく短い回転性めまい発作を繰り返すという特徴があります。めまい発作は繰り返すたびに徐々に弱くなってやがて消失します。通常は数日〜数週間以内には自然に治癒しますが、しばらく経った後に再発することも多いです。治りが悪い場合には運動療法という特別な治療法を指導します。
15.前庭神経炎
前庭器官に接続する神経(前庭神経)の急性炎症で起こるめまいです。突然生じる回転性のめまい発作が最初に1回あり、その後片方の耳の平衡機能が失われて、起立・歩行が困難となり数日は寝たきりの状態になります。一過性の前庭性めまいよりも症状は重く、歩行可能になるまで1週間ほどかかることも多いです。回転性めまい発作自体は繰り返しませんが、平衡障害が後遺症として残り、体を急に動かした時のふらつき感が1年以上続くケースもあります。
治療としては、初期には入院して安静を保ちつつ点滴等を行い、症状が改善してきたらむしろ積極的に動いて、バランスをとるリハビリ的な訓練を行うことになります。
16.起立性調節障害
俗にいう脳貧血や自律神経失調症といわれるめまい・ふらつきです。長時間立っていたり急に立ち上がったりした時に、普通は血圧が保たれるように調節機能が働きますが、それがうまくいかずに血の気が引いたようにクラクラと座り込んでしまうような症状が出ます。シェロングテストという検査で血圧を測定することで、ある程度の診断がつきます。症状に応じて薬を処方することがあります。
このページのトップヘ
鼻
1.アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)
アレルギーとは、ある物質(アレルギー原因物質)に対して体が過剰に反応して起こる病気です。その物質のことを、抗原(こうげん)と呼びます。特に鼻は外から様々な物質を吸い込むため抗原に対する反応が起こりやすく、鼻粘膜で起こったアレルギー反応によりアレルギー性鼻炎が生じます。原因物質が花粉の場合、アレルギー性鼻炎と目の結膜で起こった反応(アレルギー性結膜炎)などをひっくるめて花粉症と呼びます。
症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまりが主になりますが、花粉症の場合は目の症状に加えて、のどや皮膚のかゆみを訴える方もいます。アレルギー性鼻炎の抗原は大きく分けて、ハウスダストやダニなどのように1年を通じて症状を起こすものと、花粉のようにある特定に時期に症状を起こすもの、の2つがあります。特に花粉はスギ(2〜4月)のみでなく、ハンノキ(1〜3月)、ヒノキ(3〜5月)、カモガヤ(5〜7月)、オオアワガエリ(6〜8月)、ブタクサ(8〜10月)、ヨモギ(8〜10月)、セイタカアワダチ(アキノキリンソウとも言い、10〜11月)など、1年を通じて何がしかの花粉が飛んでいます。また花粉症の中には、リンゴ・キウイ・モモ・サクランボ・バナナなどの果実を食べると口内〜のどがイガイガしたり腫れぼったくなったり等の症状を訴える方がいますが、これは口腔アレルギー症候群という病気の可能性が高く十分な注意が必要です。
アレルギーが疑われた場合には、自分が何に対してアレルギーがあるのかをきちんと認識するのが重要です。そのため、当クリニックでは採血によるアレルギー検査などをお勧めします。検査によってお金もかかりますし、検査をしたからと言っても治療そのものに大きな違いは出ないかもしれません。しかし、アレルギーの原因が分かることで今後の対策が立てやすくなり、治療をするうえで最終的には大きなメリットになると思います。
アレルギー性鼻炎の治療法には様々なものがあり、詳しくは「治療のご案内」のページの「花粉症・アレルギー性鼻炎に対する治療」で説明していますのでご覧ください。
鼻中隔わん曲症
鼻づまりを訴える方の中には、鼻の真ん中で左右を分けている仕切り(鼻中隔;びちゅうかく)が曲がっている人がいます。鼻中隔わん曲症という状態ですが、実は成人の大部分の人は軽いわん曲を持っています。要はそのわん曲が鼻づまりの原因になるほどの程度で症状が出た場合に、治療が必要な鼻中隔わん曲症となります。
鼻中隔の軟骨や骨そのものが曲がっているため、根本的な治療については手術が必要になります。鼻中隔わん曲症がありながら、本人がそうとは知らずに市販の鼻づまり用の点鼻スプレーを漫然と使用しているケースがありますが、この場合は点鼻薬性鼻炎という一種の依存状態になっている恐れがあります。つまり、点鼻薬を使ってすぐは効くものの、徐々に効果が弱く短くなり、点鼻薬を使わないと常に鼻づまりになっているという状態になります。このようなことにならないためにも、きちんと鼻内の診察を受けることが望ましいと言えます。
急性副鼻腔炎
副鼻腔に細菌感染が起こり、炎症が急に強く生じたものです。片鼻の詰まりと膿のような鼻水が出て、鼻内〜頬〜目の周りの強い痛みを伴います。基本的な治療は抗生物質ですが、鼻内の処置などを併用するとより有効です。診断のためにも、鼻内の診察と副鼻腔レントゲン撮影が有用です。
慢性副鼻腔炎
副鼻腔の炎症が慢性化したものです。細菌感染が基礎にある場合もありますが、最近はアレルギーや免疫が関与するタイプも多く、急性副鼻腔炎ほど単純な原因では説明できません。鼻茸(はなたけ;鼻内にできるポリープ)を合併することもあり、鼻水や鼻づまりもきたします。俗に言う「蓄膿症」がこれにあたる病気で、以前は手術治療くらいしか根本的治療はありませんでしたが、近年ではある種の抗生物質などが効くケースも多いです。薬の治療と鼻内の処置を併用して良い状態をコントロールできる場合も多いですので、まずは診察・検査を受けて今後の治療方針をご相談いただければと思います。
このページのトップヘ
口・のど
1.口内炎・舌炎
口内粘膜〜舌が荒れる状態で、栄養障害や感染などが原因となることがあります。体の免疫状態を反映して口内炎が多発することもあり、治りにくかったり何度も繰り返したりという場合には、全身的な検査や隠れている病気のチェックを行う必要があります。
一般的な口内炎・舌炎の治療にはステロイド入りの軟膏などを使用します。しかし、ある種のウイルス感染やカンジダなどのカビの感染でも口内炎が起こることがあり、こうした状態で一般的なステロイド入り軟膏を漫然と使用するとかえって悪化しますので注意が必要です。免疫力が弱っている人や糖尿病などの基礎疾患がある人はこうしたリスクが特に強くなり、適切な検査・診断・治療が求められますので、きちんとした口内の診察を受ける必要があります。
2.シェーグレン症候群
膠原病の1種で、いわゆるリウマチと類似の疾患です。口内乾燥に加え、目の乾きや手指の関節痛を訴えることもあります。唾液の分泌が少なくなるので、口内は乾燥して不潔になりやすく、虫歯が多くなります。診断のためには血液検査や、組織検査といって下唇の裏の粘膜を小さく切開して小さな組織を取る検査が有用なことがあります。
3.扁桃炎
ウイルス感染などが関与する特殊なタイプの扁桃炎もありますが、一般的には細菌感染による扁桃腺の炎症です。のどの強い痛みと高熱が出現し、かなりつらい状態になります。のどの奥をみると、扁桃腺の表面に膿のようなものが白くべったりと付着しているのが見える場合もあります。適切な抗生物質を用いれば、基本的には数日で症状は改善します。
しかし人によってはこうした炎症を何度も繰り返す場合があり、特に反復性扁桃炎などとも呼ばれます。年に何度も扁桃炎を繰り返す人には手術をお勧めする場合があり、その際は近隣の手術可能な病院をご紹介いたします。
4.扁桃周囲炎・膿瘍
炎症が扁桃腺のみならず、その周囲まで波及してしまった重症型です。扁桃腺周囲が炎症で腫れてしまったものが扁桃周囲炎で、さらに扁桃腺の周囲組織に膿が貯まった状態が扁桃周囲膿瘍です。のどの痛みでも特に片側がかなり痛み、唾を飲み込んだり口を開けたりするのが難しい場合は、このような状態になっている可能性があります。
この状態になると、抗生物質の内服のみでは効きが悪いことが多く、点滴や重症例では入院も必要になります。特に膿瘍になっている場合は、腫れている部位を針で刺すかメスで切開して、貯まった膿を出すことで症状の改善が期待できます。いずれにせよしっかりとした診察を受け、適切に対処してもらう必要があります。
5.急性喉頭蓋炎
のどの奥の喉頭蓋(こうとうがい)という部位が炎症を起こして腫れてしまう病気です。喉頭蓋は声帯の上方に蓋をするように突出している組織で、口を開いただけでは普通は見えません。場所的に、喉頭蓋が腫れて息の通り道を塞いでしまうと窒息の危険があるので、注意が必要です。のどの痛みとともに、のどの異物感が強く、唾を飲み込むのが難しい・発声するとくぐもった声になる・息苦しいなどの症状は要注意です。特に、息苦しくて横になれない(座ったまま呼吸をする)・唾が飲み込めずによだれのように垂らす、などの症状がみられる場合は、窒息が差し迫っている状態の可能性があり、直ちに専門的な診察・治療を受けなければなりません。昨日まで元気で健康だった人が突然この病気になることもあり、突然死の原因ともなり得ます。診断には、耳鼻科でファイバースコープなどを用いて確認する必要がありますので、ためらうことなく適切な受診をお願いしたいと思います。
この病気の場合は原則として入院が必要です。通常は抗生物質やステロイドの点滴を行いますが、窒息が差し迫っている場合には気管切開(のどに外から穴を開け、一時的に息の通り道を確保する)という手術を緊急で行います。
6.逆流性食道炎
胃酸が食道〜のどまで逆流し、色々な症状を起こす病気です。のどの粘膜が胃酸によって刺激を受け、のどの異物感を強く訴えることも多いです。胃酸の逆流に伴って、胸やけ・ムカムカ感・胃のあたりの不快感・ゲップが多い、などの症状も見られることがあります。胃酸を抑える薬を内服することで、症状の改善は期待できます。ただ、食道〜胃にかけての他の病気を確認する意味から、胃カメラなどの消化器検査は重要です。必要がある場合には、こうした検査も含めて近隣の医療機関に紹介することもございます。
7.声帯結節・声帯ポリープ・ポリープ様声帯
声を出すところは声帯と言って、のどの一番奥の左右に存在します。左右の声帯がこすれ合って振動することで声が出るのですが、声帯に何らかの病変があるとその振動が上手くいかず、声がれとして症状が出ます。代表的な病気としは、左右の声帯に突起状の粘膜隆起ができる声帯結節、片方〜両方の声帯にポリープ状の粘膜隆起ができる声帯ポリープなどがあり、声をよく使う人に多い傾向があります。また、声帯そのものがポリープのようにブヨブヨとした状態になるポリープ様声帯という病気もあり、声はガラガラ声になります。声を安静にしたり炎症を抑える薬を用いたりして改善することもありますが、それでも治りが悪ければ手術治療が有効です。
8.喉頭がん
声帯を含めた喉頭にできる悪性腫瘍です。声帯にできたものは声がれとして自覚症状が出やすく、本人が自覚して耳鼻科をきちんと受診すれば、早期発見・早期治療が可能で、治癒する可能性があるがんです。圧倒的な危険因子としては喫煙で、喫煙者の発病率は非喫煙者の何倍にもなります。慣れた耳鼻科医がファイバースコープなどで観察すれば、ほぼ確認はできますが、確実な診断をするためには組織検査が必要です。のどの奥の組織を切除することになるため、必要に応じて設備のある近隣の病院にご紹介いたします。
9.声帯麻痺
呼吸・発声・飲み込みなどの動作時には左右の声帯が動きますが、その動きが麻痺をした状態です。左右の声帯が真ん中で閉じずに隙間ができるため、声がれ・水を飲むとむせる、などの症状が出ることがあります。声帯を動かす神経は主に反回神経という神経の働きによりますが、この神経自体の何らかの障害や、神経に命令を出す脳の障害で、麻痺が出現します。神経自体の障害では原因不明のこともありますが、この神経は胸の上部を通るという特殊な走行をするため、胸部大動脈瘤や胸部腫瘍などが隠れていて声帯麻痺が出現することもあり、注意が必要です。また脳の障害では、脳梗塞などでこうした麻痺が出ることがあり、飲み込みが上手くいかずにむせてしまって誤嚥性肺炎になりやすくなる等の問題があります。
麻痺を起している元の病気が治療されるのが一番よいのですが、それが叶わなければ声を改善させたり、飲み込みを上手くさせる処置を講じたりすることになります。声の改善には特別な手術が、飲み込みの改善には特別なメニューによるリハビリや手術が必要となり、いずれも専門の医療機関での治療が望ましいと思います。
このページのトップヘ
首、その他
1.急性耳下腺炎
耳の前方〜下方にある耳下腺という唾液を作る組織が炎症を起こして腫れた状態です。ムンプスというウイルス感染によるものが俗に言う「おたふくカゼ」で、細菌感染によるものは急性化膿性耳下腺炎などと呼ばれます。ウイルス感染は抗生物質が効きませんので、原則として十分な栄養・休息をとって安静にし、対症療法で経過をみることになります。細菌感染は抗生物質を投与することで、通常は速やかに症状の改善を認めます。
2.顎下腺唾石症
顎の下左右にも顎下腺という唾液を作る組織があり、そこから管を通って舌の下に唾液は出てきます。その顎下腺から管の途中に石ができることがあり、そうなると唾液の流れが悪くなって顎下腺が腫れてしまいます。食事のたびに(つまり唾液が出ようとするたびに)、顎の下が腫れて痛む場合にはこの病気が疑われます。石が比較的浅いところにあれば触診で確認も可能で、局所麻酔下に口の中から摘出手術ができる場合もあります。石が深くに存在することが疑われれば、基本的には設備のある病院に紹介してCTなどの画像検査で石の場所・大きさ・個数などを確認したうえで、局所麻酔下に口の中からか、場合によっては全身麻酔下に皮膚を切開して顎下腺ごと摘出手術を行うこともあります。
3.亜急性甲状腺炎
比較的若い女性に起こる、甲状腺の炎症疾患です。細菌感染とは異なり抗生物質が効かず、甲状腺部分に痛みを伴うしこりができて、それが移動するという特徴があります。ステロイドがよく効きますが、良くなったからといってすぐに止めてしまうとぶり返すこともあり、十分に経過をみていく必要があります。
4.急性リンパ節炎
正常でも首には元々リンパ節と呼ばれる組織が散在していますが、のどなどの炎症に伴ってそこの近くのリンパ節が腫れるのがリンパ節炎です。細菌感染によるものやウイルス感染に伴うものなどがありますが、特殊な例として結核の感染によるリンパ節炎もあり注意が必要です。また、あまり痛みを伴わずに徐々に硬く増大してくるリンパ節は、悪性腫瘍の転移なども考えられますので要注意です。
5.睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸が停止する発作を繰り返す病気です。放置すると子供では成長障害の原因になったり、大人では高血圧や心臓病などに関与して突然死の原因となったりと言われ、注意が必要です。熟睡できないため日中でも眠気が強く、ひどい場合には車などの運転中に眠ってしまうこともあり重大な事故の危険性も出てきます。お子さんでは扁桃腺やアデノイドが大きいことが原因となることが多く、成人では元々のどの形が狭い場合に加え、肥満が原因になることもあります。検査としては、睡眠中に機械を付けるなどして無呼吸の程度を測定します。
治療を要する無呼吸があると判断されれば、治療方針を決定します。扁桃腺が大きい・のどの形が狭い・鼻中隔わん曲症がある、などの問題に対しては手術を行って息の通り道を十分広げます。手術が不要のケースなどで効果を上げているもう一つの治療法が、経鼻的持続陽圧呼吸療法装置です。この機械を付けて眠ってもらうと、無呼吸になると機械が自動的にマスクを通じて空気を送り込み、睡眠中に十分な呼吸を確保することができます。治療の導入後は、月1回の受診で装置の働き具合・症状をチェックしていきます。ひどいいびきや睡眠中の無呼吸を家族から指摘された方は、どうぞご相談下さい。
6.顔面神経麻痺
顔の筋肉は顔面神経という神経の働きで動きますが、この神経が何らかの原因で麻痺した状態です。片側の顔面が動かなくなって目が閉じられなくなったり、口に含んだ水が口元から漏れてしまったりします。ヘルペスなどのウイルス感染で起こると言われますが、脳梗塞に伴う場合や、神経の通り道に腫瘍ができて生じるケースもあり(例えば脳腫瘍の一種や耳下腺腫瘍など)、きちんとした検査が必要です。特に水ぼうそうのウイルスが再活性化して起こる顔面神経麻痺をハント症候群といい、顔面神経麻痺のみならず聴神経や平衡神経なども障害を受け、難聴やめまいが生じることもあります。耳の中や周囲に水ぶくれ様の発疹ができ、かなり強い痛みが残ります。
治療に関しては、やはり早めが有効と言われております。基本的には抗ウイルス剤服用と、ステロイドの使用(点滴または内服)を行います。目が閉じられないので、角膜・結膜を保護する目的で点眼薬や眼軟膏も用います。治療によって、1〜2週間以内と比較的早期に改善してくるケースの他に、数か月かかって徐々に改善してくるケースもあります。
7.アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、アレルギーが関与する皮膚の慢性疾患であり、皮膚は湿疹の状態をとります。年齢に応じて目の周囲・耳たぶの下・首〜肩・肘の内側・膝の裏側などに病変はよく出現し、かなり痒がります。かゆみのために皮膚を掻きむしるので、出血を起こして余計に病変をひどくしてしまいます。そのため伝染性膿痂疹(いわゆる「とびひ」)や伝染性軟属腫(いわゆる「みずいぼ」)などにかかりやすく、注意が必要です。また皮膚そのものは乾燥傾向で皮膚のバリア機能が弱くなっており、刺激に対して傷付きやすい状態になっています。また、顔面のかゆみにより目の周りを掻いたりたたいたりするため、思春期以降に白内障や網膜剥離などの目に対する重大な合併症が生じる可能性が言われています。
このためアトピー性皮膚炎の治療は、できてしまった病変(炎症)そのものを抑える治療に加え、病状を悪化させない治療・処置が必要になります。アトピー性皮膚炎の治療に関しては、これだけやればよいという魔法の治療は存在しません。個人個人の状態に応じて、さまざまな治療・処置を組み合わせてきめ細かく丹念に続けて行くことが重要で、それが長い目で見ると患者さんのメリットになります。ちまたに氾濫する怪しい情報に惑わされることなく、しっかりとした対応をとってほしいと思います。
アトピー性皮膚炎治療の具体的な内容については、「治療のご案内」のページの「アトピー性皮膚炎に対する治療のコツ」で説明していますのでご覧ください。
このページのトップヘ
ご予約
交通・アクセス 地図
詳しい地図はこちら 地図へ
〒374-0111
群馬県邑楽郡板倉町海老瀬4064-5
電話番号:0276(80)4333


・(社)館林市邑楽郡医師会